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2026-10-03 のダイジェスト

2026-10-03

本日はサイエンス7件。HIV NNRTIリードの救出、野生型KIT選択的阻害剤、MAP2K4/7の共有結合阻害、OGT動員キメラ、マスク型T細胞エンゲージャー、新しいヒット探索ライブラリ、経口GLP-1の総説に加え、ノバルティスのAbogen mRNA T細胞エンゲージャー導入(最大78億ドル)を取り上げます。

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メドケム

6件

二機能性OGTACがOGTを標的タンパク質へ誘導しO-GlcNAcを付加

  • OGT/OGA阻害は数千の基質に影響するため、タンパク質ごとのO-GlcNAc機能の特定は難しく、OGTACは目的タンパク質へOGTを動員することでこれに対応する。
  • 各OGTACはOGT結合要素、リンカー、標的認識モチーフから成り、TPRドメインによる基質認識を部分的に迂回し得る。
  • 有効なO-GlcNAc付加には適切な三者複合体形成と非阻害的なOGT結合が必要で、標的認識モチーフが標的範囲と選択性を決める。
  • 局所的な付加は、タンパク質の分解、シグナル伝達、転写の変化と結び付けられている。
💡 ポイント

ここはOGT結合部位がすべてだと思う。OGTを阻害してしまえば、本来向け直したい活性そのものを失うので、非阻害的な結合剤の取得がSAR上の本当の壁になる。分解誘導剤のE3リガンド選びと似た構図だ。選択性をOGTのTPRドメインではなく標的認識モチーフが決める点もモジュール型で魅力的。ただしAccounts形式の総説なので、標的横断でどこまで通用するかを見てから評価したい。

Chemically Induced Proximity for Targeted Protein O-GlcNAcylation ↗

コイルドコイルのマスクで、腫瘍プロテアーゼに切られるまでT細胞エンゲージャーを不活性に保つ

  • 抗CD3 Fab(OKT3、UCHT1)にロイシンジッパー型コイルドコイルを切断可能なリンカー経由で融合して立体的にマスクし、PSMAまたはHER2を標的とするナノボディと組み合わせた。
  • マスクによりCD3結合は大きく低下し、プロテアーゼ切断で大部分が回復した。組換えCD3でもT細胞上のCD3でも同様であった。
  • マスク型はJurkat細胞を活性化せず、マスク解除型は活性化した。
  • MMP2で切断されるリンカーを持つ型は、PBMC共培養でPSMA陽性およびHER2陽性がん細胞をMMP2依存的に殺傷し、オンターゲット・オフ腫瘍毒性の抑制を狙う。
💡 ポイント

魅力はマスクがモジュール式な点だ。切断リンカーを差し替えれば、同じロイシンジッパーの足場を別のプロテアーゼ向けに調整できる可能性があり、設計を一つに固定するより柔軟だ。気になるのは切断後と非マスク型の結合の差で、回復は「大部分」であって完全ではない。MMP2も腫瘍に厳密に限定された酵素ではない。ここで示されたのはJurkatとPBMC共培養のみなので、オフ腫瘍の安全性は目標であって、まだデータではない。

Proteolytic Activation of T Cell Engagers And Bispecific Proteins Using Modular Coiled-Coil Peptides ↗

入口チャネル標的設計でNNRTIリードJK-4bの細胞毒性を低減

  • JK-4bは野生型および臨床HIV-1変異株に強力な活性を示すNNRTIだが、高い細胞毒性のため開発が中止されており、本研究ではこれをリードとして新規誘導体を設計した。
  • NNRTIの入口チャネルを狙う構造ベース設計により、細胞毒性が低く選択性の高いシリーズが得られた。
  • 主要化合物9nは、二重変異株を含む代表的な耐性変異株に対して強い活性を保ち、エトラビリンと同程度であった。
  • 9nはチトクロームP450阻害が小さく、ヒト肝ミクロソームでの代謝安定性も良好で、さらなる開発が期待される。
💡 ポイント

お蔵入りしたリードの救出は、ゼロから始めるより面白い。JK-4bには活性も耐性株カバーもすでにあったので、問われたのは入口チャネルとの相互作用で細胞毒性を切り離せるかどうかだ。9nのプロファイルが再現するなら、毒性はファーマコフォアに固有ではなく骨格の調整で動かせたことになる。二重変異株でエトラビリンに並び、P450阻害も微小、ミクロソーム安定性も良好という点は、さらに合成を進める前に確認したかった材料そのものだ。

Targeting the HIV-1 NNRTI Entrance Channel: Structure-Guided Optimization for Enhanced Safety and Selectivity ↗

第一世代の経口GLP-1薬から学ぶ、次世代分子の設計指針

  • danuglipron、lotiglipron、DA-302168S、orforglipronなど臨床に進んだ非ペプチド性GLP-1受容体作動薬を事例とし、それぞれが経口化の課題をどう解決したかを検討している。
  • これら第一世代の分子になお残る設計上の課題も整理している。
  • 次世代の戦略として、ペプチド模倣体の設計、マルチターゲット作動薬、オルソステリックとアロステリックの協調性の活用を提案している。
  • スクリーニングカスケード、前臨床動物種の選択、製剤化、早期の安全性評価といった実務面にも触れ、他の難しいGPCR標的への示唆も述べている。
💡 ポイント

臨床に進んだ4つのケモタイプは、大きなペプチドを認識するクラスB GPCRという同じ難題への、4通りの答えだ。この手のレビューで知りたいのは、生き残った分子それぞれの背後にあるSAR上の理屈である。追いかけたいのはオルソステリックとアロステリックの協調性で、活性と膜透過性のトレードオフを緩められる可能性がある。ただ成否はスクリーニングカスケードや動物種の選択次第で、プログラムが躓きやすいのもそこだ。

Oral Small-Molecule GLP-1 Receptor Agonists: Lessons from Clinical Candidates and a Blueprint for Next-Generation Design ↗

JNKシグナルの遮断でKRAS G12D阻害薬に耐性の膵がん細胞が再び感受性を示す

  • KRAS G12D阻害に適応した膵がん細胞は、JNK経路をより完全に抑えることで感受性を回復させることができる。
  • MAP2K4、MAP2K7、または両者に対する選択的な共有結合性阻害剤を用い、必要なJNK抑制の程度を調べた。
  • JNKをより強く遮断すると、耐性細胞でKRASシグナルを再活性化するフィードバック回路が働かなくなる。
  • 阻害薬に感受性の細胞では効果が見られず、この脆弱性は耐性状態に特異的である。
💡 ポイント

これが裏付けられるなら面白いのは筋の通し方で、KRAS G12D阻害薬への耐性がJNKのフィードバックを介しているなら、再びKRASを叩くのではなく経路を組み替えるノードを狙うことになる。MAP2K4とMAP2K7への共有結合は、抑制をどこまで深くすべきかを問う巧い手だが、両キナーゼ間の選択性が実際のSARの悩みどころになるだろう。感受性の細胞に影響しない点は心強いが、まだ要旨レベルの話だ。

Exploiting Acquired Drug Resistance in Pancreatic Cancer through Selective Covalent Targeting of MAP2K4/7 ↗

構造ベース設計でクラスIII RTKのオフターゲットを回避した野生型KIT選択的阻害剤

  • クラスIII受容体型チロシンキナーゼ間ではATP結合部位が高度に保存されており、KITのみを選択的に阻害するのは難しい。本研究は構造ガイドの最適化でこの課題に取り組んだ。
  • トリアゾロピリジン型ヒンジ結合部位が選択的な出発点となり、中央リンカーの変更により、活性と薬物動態が向上した「逆」アリールアセトアミド系列へ展開した。
  • ピラゾールリンカーとヒンジ結合部位の修飾でヒト血清存在下でも活性を維持し、末端アリール基の調整でCYP時間依存的阻害が軽減され、キノーム選択性も向上した。
  • 結晶構造から、ゲートキーパー近傍のリンカーの立体電子効果が選択性を左右し得ることが示され、慢性疾患治療に適したリード化合物が得られた。
💡 ポイント

目を引いたのはヒンジ結合部ではなくリンカーだ。ゲートキーパー近傍の立体電子効果が、クラスIII RTK間のATP部位の類似性では本来得られないはずの選択性を生んでいるらしい。混み合った他のキナーゼファミリーにも使えそうな手がかりだ。さらに、CYPの時間依存的阻害とヒト血清下での活性という問題を同じキャンペーンで解決している点も好印象で、慢性投与を見据えたリードという印象を受ける。

Leveraging Structure-Based Design to Overcome Class III RTK Off-Target Activity in the Development of Selective Wild-Type KIT Inhibitors ↗

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計算・AI創薬

1件

Scopeライブラリ:フラグメントと完成分子の間の化学空間で扱いやすいヒットを狙う

  • Scopeは、フラグメントと高度に修飾された低分子量ライブラリ化合物の中間に位置する化学空間を定義し、化合物の質、リガンド効率、選択した物性範囲を重視して、メディシナルケミストリー上扱いやすいヒットを得ることを狙う。
  • Scope環系(ring-X-ring)がこの空間を整理し、低〜中マイクロモル域の活性を目指した意図的な官能基化を導く。約1万化合物のセットは、SPR、ネイティブMS、DSF、生化学アッセイによる中程度スループットのスクリーニングに適する。
  • トリパノソーマCLK1、14-3-3/ERαの分子糊プロジェクト、SARS-CoV-2 Mproの事例では、一次ヒット率は多様性セットと同程度で、カウンタースクリーニング後のリガンド効率は優れていた。
💡 ポイント

正直、ここで惹かれるのは「すぐ手を動かせるヒット」という発想だ。フラグメントと完成度の高い化合物の間に置いたライブラリで、リガンド効率を軸に、ring-X-ring のコアが次にどこを修飾すべきかを示してくれる。1万化合物規模ならSPR、ネイティブMS、DSFで回せるので、小さなグループでも扱える。気になるのは、一次ヒット率は多様性セットと同程度でカウンタースクリーニング後のLEが良いという結果が、3標的を超えても再現するのか、そして環系の制約が新規性をどこまで狭めるのかという点だ。

The Scope Concept: Defined Chemical Space for Identifying Ligand-Efficient, Tractable Hits Applied to Drug Discovery Targets Trypanosomal CLK1, 14–3–3/Estrogen Receptor-α, and SARS-CoV-2 Mpro ↗

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業界ニュース

1件

ノバルティス、自己免疫疾患向けAbogenのmRNAコードT細胞エンゲージャーをライセンス導入

  • ノバルティスは、体内で産生されB細胞をリセットする自己免疫疾患向けのmRNAコードCD19xCD3 T細胞エンゲージャーABO2203の全世界独占権を取得した。
  • 契約は前払い5億7,500万ドルに加え、最大72億ドルのマイルストーン(総額最大78億ドル)とロイヤルティで構成される。
  • ノバルティスはAbogenの他のRNAベースのプログラムに対するオプションも得る。
  • 本契約は、ノバルティスが3人の死亡を受けて自己免疫疾患向けCAR-Tプログラムを一時停止した数週間後に結ばれた。
💡 ポイント

78億ドルという見出しの大半は条件付きで、5億7,500万ドルの前払いこそ本気度のシグナルだ。自己免疫疾患向けCAR-Tを止めた直後のこの契約は、B細胞リセットという仮説を、体内産生のmRNA型CD19xCD3へ振り向けてヘッジしているように映る。Abogenの他RNAプログラムへのオプションも、単一資産ではなくプラットフォームへのアクセスを買っている印象を強める。

Novartis pens $7.8B deal for Abogen's in vivo autoimmune T-cell engager ↗