薬理 — 2026年10月
2026-10-23 1件
BCL9/β-カテニン阻害の低分子をグリオブラストーマ細胞で検証
- β-カテニンの共活性化因子BCL9には低分子阻害剤がなく、グリオブラストーマでの治療的価値は薬理学的に検証されていなかった。
- 新規阻害剤ZD37-28Rはドッキングでβ-カテニンへの結合が予測され、in vitroでBCL9/β-カテニン相互作用を阻害した。
- β-カテニン依存的な転写を抑え、U87-MGとU251のグリオブラストーマ細胞の増殖と遊走を低下させた。
Wnt/β-カテニンは低分子創薬の墓場と言われてきた。β-カテニン全体を狙うより、BCL9選択的なPPI阻害のほうが現実的な切り口だ。残る課題はPPI創薬で定番のもので、ドッキングではなく直接的な物理化学的結合の証拠、他のβ-カテニン結合因子への選択性、グリオーマに必要な脳内曝露である。現時点ではリードではなく、標的バリデーションの仕事として読むべきだ。
2026-10-17 2件
分子グルーRPT04402、高悪性度子宮がんでPP2Aトリマー形成を回復
- 高悪性度子宮がんでPP2A AαB56αCヘテロ三量体の形成を回復させる分子グルーRPT04402を報告した論文。
- これらの腫瘍に多いPPP2R1Aスキャフォールド変異はホロ酵素の組み立てを損なっており、グルーはそれを救済する設計。
- 企業側の発表ではPP2A変異モデルでの腫瘍退縮とSpringWorksへのライセンスが伝えられている。この要約はタイトルと二次情報に基づき、全文は未確認。
ホスファターゼは創薬が難しいことで有名だが、活性部位の阻害ではなく特定のヘテロ三量体を組み直すグルーは賢い迂回路だ。変異が患者層と機序の両方を規定する点もきれいに噛み合う。気になるのは多数あるPP2A Bサブユニット複合体の中での選択性で、誤った複合体の活性化は忍容性の明らかな懸念になる。
経口TREM2作動薬VG-3927、前臨床とヒト初回投与データで臨床へ
- アルツハイマー病向け経口低分子TREM2作動薬VG-3927(SAR448851)の前臨床およびヒト初回投与評価を報告した論文。
- 公開報道では、用量漸増での忍容性、中枢移行性、脳脊髄液中の可溶性TREM2マーカーの低下が伝えられている。
- この要約は論文の掲載情報と二次報道に基づき、全文は確認できていない。
TREM2の取り組みは抗体が中心なので、脳移行性の経口作動薬がCSFの薬力学マーカーを動かしたことは、モダリティ面で注目に値する。問題は、可溶性TREM2の低下が実際の受容体活性化を反映するのかで、マーカーが動いてもミクログリア機能が変わるとは限らない。ヒト初回投与データが示すのは曝露と標的結合までで、有効性ではない。
2026-10-13 1件
D3R/MOR比が低いMOR/D3Rデュアルリガンド、マウスで乱用関連シグナルが低下
- MOR部分作動薬TRV734とD3R拮抗型のtrans-シクロプロピルアミン骨格を融合したデュアルリガンドで、より安全なオピオイド鎮痛薬を目指した。
- (R)-LS02-14とTRV734は強い抗侵害作用を示したが、乱用リスクと呼吸抑制のシグナルは同程度だった。
- D3R/MOR比がはるかに低い(R)-LS01-64は鎮痛は穏やかだが、報酬強化・条件づけ効果が弱く、呼吸への影響も小さかった。
行動プロファイルを決めるのは単なるD3R結合ではなくD3R/MORのバランスであり、最も安全な化合物は鎮痛も弱かった。これはおなじみのトレードオフで、効力を保ちつつ報酬抑制効果も残せる比率があるかが次の問いになる。
2026-10-05 1件
バルナーゼ改変体を載せたDNAオリガミ、変異KRAS mRNAの切断を狙う
- 変異KRASは構造的に多様で薬物結合ポケットにも乏しく、低分子阻害薬の開発を難しくしてきました。
- 著者らは、タンパク質ではなくmRNAを標的とする分解システムを、6本ヘリックス束(6HB)のDNAオリガミ足場上に構築しています。
- 一方のモジュールは改変バルナーゼとプログラム可能な認識鎖を組み合わせ、細胞内在の機構に頼らず直接RNAを切断します。もう一方は細胞内への取り込みを担う設計です。
KRASに狙うべきポケットがないなら、mRNAを狙うのは筋の通った回避策で、触媒的なバルナーゼは配列ガイド型切断というすっきりした機構を与えます。ただ、盛り上がる前にデータを見たいところです。バルナーゼの切断は触媒的で漏れに容赦がないので、認識鎖は一塩基変異体と野生型KRASをどこまで見分けられるのか。そして送達に耐え、細胞内で実際の活性を示し、siRNAやASOと妥当な比較ができているのか。