アーカイブ · 2026年 · 2026年10月

2026-10-22 のダイジェスト

2026-10-22

本日はサイエンス7件。フマル酸ハンドルのTTK分解薬、electrophile-firstのUBE2D2阻害剤、選択的マクロ環CDK7阻害剤、PDE4BとMKK3の創薬、吸入DDR阻害剤、コフォールディング評価。業界ニュースはRoche–HansohのADC提携、GSKのB型肝炎薬承認、Roivantのぶどう膜炎試験結果の3件です。

⚗️

メドケム

6件

吸入投与を前提に設計したピロロピリミジン系DDR1/2阻害剤、肺線維症を標的に

呼吸器・線維症
  • 構造ベース設計により、DDR1/DDR2に強い親和性と良好なキノーム選択性を示す2つの5:6複素環シリーズを得た。
  • 続いて吸入を前提とした設計で、活性・物性・in vitro ADMEを肺内局在型に最適化した。
  • 化合物25は、TGF-β誘導の線維化モデルで抗線維化作用を示し、局所投与に適した薬物動態を備えていた。
💡 ポイント

吸入キナーゼ阻害剤は、肺内滞留と全身クリアランスのバランスで成否が決まる。全身投与型化合物を後から改造するのではなく、最初からそこを狙って設計するのは正しい選択だ。注意したいのはリソソーム捕捉や粘液線毛クリアランスで、in vitro ADMEでは捉えにくい。DDRの生物学は線維症で説得力があるが、臨床での検証はまだ待たれる標的である。

Lung-Tailored Pyrrolo-pyrimidine DDR Inhibitors Designed for Optimized Local Delivery ↗

キノーム全体で高選択的かつ経口投与可能なマクロ環CDK7阻害剤

  • 17員環マクロ環のピラゾロトリアジン骨格を構造に基づいて最適化し、強力なCDK7阻害剤を得た。
  • 400種超のキナーゼパネルで有意なオフターゲット活性はなく、既存CDK7阻害剤の選択性の低さを克服している。
  • 細胞では細胞周期停止と転写抑制、c-Myc低下を示し、特にトリプルネガティブ乳がん細胞で顕著だった。経口バイオアベイラビリティも良好で、薬物動態は線形だった。
💡 ポイント

CDK7で400種超のキナーゼにわたりクリーンな結果が出るのは珍しい。この分野の共有結合阻害剤はTHZ型の弾頭に頼ってきたからだ。非共有結合のマクロ環で経口曝露も取れているなら、転写依存性の適応症で実際に手に取りたいプロファイルである。残る問いはオンターゲット毒性で、キナーゼ間の選択性だけではCDK7の正常な転写での役割に起因する毒性は避けられない。

Discovery of Pyrazolo[1,5-a]-1,3,5-Triazine Derivatives as Potent, Highly Selective and Orally Available Macrocyclic CDK7 Inhibitors ↗

非ATP競合型MKK3モジュレーターが潰瘍性大腸炎モデルでTNF-αを抑制

  • ATP競合型p38阻害剤はキノーム選択性の低さなどで臨床で失敗したため、上流キナーゼMKK3の非ATP競合ポケットを狙った。
  • リード化合物(R)-48はTNF-α産生を抑え、経口バイオアベイラビリティが高く、マウス潰瘍性大腸炎モデルで用量依存的な効果と明確なPK/PD関係を示した。
  • 結合様式の検証にはHDX-MSなどの生物物理データを用いている。
💡 ポイント

p38の一段上流に移るのは、第一世代阻害剤を沈めた選択性の問題を回避する理にかなった方法だ。UC向けの経口TNF低下低分子が出てくれば、注射剤のバイオ医薬品とは明確に別の選択肢になる。気になるのはアロステリックなポケットで、ATP部位以外に結合するキナーゼ阻害剤のSARは急峻で種差も出やすいので、ヒトタンパクでのデータを早めに確認したい。

Design and Synthesis of Novel, Non-ATP-Competitive MKK3 Modulators as Suppressors of TNF-α Production for the Treatment of Ulcerative Colitis ↗

フマル酸エステルを付加したTTK阻害剤がRNF126経由の一価分解薬に

  • TTK阻害剤に求電子性のフマル酸モノメチルを付けるだけで、E3リガンドを持たない単一弾頭の分解薬が得られた。
  • 代表化合物はTTKを分解し、複数のがん細胞株で元の阻害剤より強い増殖抑制を示した。
  • 機構解析では、化合物がE3リガーゼRNF126とTTKの会合を安定化し、ユビキチン化とプロテアソーム分解を促すと示唆された。
💡 ポイント

一価分解薬の魅力は、阻害剤並みの分子量と膜透過性を保てることだ。ただしフマル酸ハンドルはシステイン反応性の基なので、RNF126だけで説明できるかはプロテオーム規模の反応性データを見てから判断したい。それでも他のキナーゼ骨格に使い回せるなら、手持ちの阻害剤シリーズで試す価値のある安上がりな手だ。

Discovery of Threonine Tyrosine Kinase (TTK) Degraders Utilizing an Electrophilic Monomethyl Fumarate Handle ↗

求電子剤優先スクリーニングでE2酵素UBE2D2の共有結合型アミノチアゾール阻害剤を同定

  • 求電子剤を先に選ぶスクリーニングとX線結晶構造解析により、UBE2D2の2つのシステイン(C85とC111)に結合する共有結合性ヒットを得た。
  • アミド基とエステル基を構造に基づいて改変し、C111への結合を消してC85への親和性を高めた。
  • 最適化類縁体はUBE2D2の酵素活性を阻害し、A549肺がん細胞の増殖を抑えた。
💡 ポイント

E2酵素は創薬困難と見なされてきたので、結晶構造に裏づけられた共有結合シリーズが出てきたこと自体が前進だ。注目は2つ目のシステインへの結合を設計で消した点で、プローブと呼ぶには必須の作業である。次に知りたいのはUBE2Dファミリーの他メンバーへの挙動で、活性中心システインは保存されているため、選択性が最大の難所になる。

Electrophile-First Screening Identifies Covalent Aminothiazole Scaffold Inhibitors for Ubiquitin-Conjugating Enzyme UBE2D2 ↗

YKS-34:特発性肺線維症を狙う、PDE4Bに1000倍超選択的な阻害剤

  • 承認済みの唯一のPDE4B優先阻害剤nerandomilastはPDE4Dに対し約9倍の選択性にとどまり、これを改善することが出発点だった。
  • YKS-34は強力なPDE4B阻害剤で、PDE4A、4C、4Dにはいずれに対しても1000倍超の選択性を示す。
  • in vitroでTGF-β誘導の線維芽細胞活性化とLPS誘導のTNF-α放出を抑え、良好な薬物動態と肺組織への集積を示した。
💡 ポイント

悪心・嘔吐の原因はPDE4D阻害なので、9倍から1000倍超へという改善は狙う価値のある最適化だ。BとDのポケット差はごくわずかなので、結合様式がどうなっているのか気になる。盛り上がるのは、ブレオマイシンモデルで治療的投与の結果を見てからにしたい。

Discovery of YKS-34, a Highly Selective PDE4B Inhibitor for the Treatment of Idiopathic Pulmonary Fibrosis ↗

💻

計算・AI創薬

1件

コフォールディングモデルはリガンド位置が合っていてもタンパク質構造を外すことがある

  • AlphaFold3、RoseTTAFold3、Boltz-2、Chai-1の4モデルを、立体配座状態が薬理を左右するキナーゼとClass A GPCRで評価した。
  • 前向き評価とするため、4モデル全ての学習カットオフ後に公開された複合体と、比較用の既存構造1つを用いた。
  • リガンドの位置が正しいことと、周囲のタンパク質構造が正確に予測されることは、系統的に別問題であることが示された。
💡 ポイント

コフォールディング構造にドッキングする人への警告ラベルがこれだ。リガンドの姿勢がもっともらしくても、DFG状態やGPCRの活性化状態が正しいとは限らない。配座こそが本質であるII型キナーゼ阻害剤やバイアス型GPCRリガンドで特に響く。SAR設計に使う前に、既知の配座マーカーで検証すべき仮説として扱うのが無難だ。

Benchmarking Protein–Ligand Cofolding Models: Correct Ligand Placement Is Decoupled From Accurate Protein Conformation ↗

🏢

業界ニュース

3件

GSKのB型肝炎薬がFDA承認を取得

  • STATは、GSKがB型肝炎治療薬でFDA承認を取得したと報じている。
  • 同報道によれば、この薬は従来の方法よりはるかに多くの患者に機能的治癒をもたらした。
  • 見出し以外の詳細は確認できていない。製品はアンチセンス薬のbepirovirsenとみられる。
💡 ポイント

B型肝炎で機能的治癒を謳うラベルが付くのは領域にとって画期的で、それを低分子でも抗体でもなくアンチセンスオリゴで実現したのがGSKだ。商業面では普及が焦点になる。有限の治療期間は患者あたりの継続収益を小さくするが、診断済みの患者層は大きい。Vir、Arbutus、中国のsiRNA勢は、超えるべき基準ができたことになる。

STAT+: GSK picks up hep B drug approval ↗

Roivant、非感染性ぶどう膜炎で免疫薬の試験が良好な結果

  • STATは、Roivantが免疫薬の非感染性ぶどう膜炎での試験で良好な結果を発表したと報じている。
  • この結果により、現在の適応を超えた新市場が開ける可能性がある。
  • 確認できたのは見出しと冒頭のみで、具体的な評価項目やデータは未確認である。
💡 ポイント

ぶどう膜炎は規模こそ小さいが、ステロイド以外の経口選択肢が求められる定着しやすい適応だ。適応拡大が加われば、開発コストをより多くの適応症で分け合える。市場が見たいのは勝利そのものより、標準治療に対する効果の大きさだろう。この資産のパートナリングや資金調達のストーリーに直結するとみている。

STAT+: Roivant says closely watched immune drug succeeded in new eye disease ↗

RocheとHansoh、規模を大きく拡大した2件目のADC提携

  • Rocheと中国のHansohは、初期段階のADCポートフォリオに関する提携を結んだ。2025年のCDH17 ADCライセンスに続く2件目のADC契約である。
  • 報道によると、契約一時金は約4億ドルで、1年後にさらに1.1億ドル、潜在的な総額は150億ドル超、加えてロイヤルティも受け取る。
  • 初期開発はグローバル第1a相までHansohが主導し、その後は大中華圏外の開発をRocheが引き継ぐ。
💡 ポイント

注目すべきは取引構造だ。ライセンサーが第1a相まで開発を担うプラットフォーム型の契約は、単一資産ではなく中国の初期ADC成果へのオプションをRocheが買っているように見える。150億ドル超という見出しの大半は後段のマイルストーンで、実質的なシグナルは5億ドル近い短期の現金コミットメントだ。中国発ADCの獲得競争でMerck、Pfizer、AstraZenecaに対抗する姿勢も保っている。

Licensing galore: Roche ties up with Hansoh on ADCs as Rani rounds out week with Chugai pact ↗